電力市場にもダイナミックプライシングの風は吹く?その理由を解説
ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing、以下DP)は、商品やサービスの単価または価格を需要に応じて変動させる仕組みのことを指します。しかし、日本の電力市場ではまだDPは導入されていません。それはなぜでしょうか?
- 社会の新しいトレンド、ダイナミックプライシング
- 電力市場へのダイナミックプライシングの導入には様々な課題がある
- 卒FITユーザーを含めた再生エネルギーの活用によって、今後の電力市場の変化に期待!
社会の新しいトレンド、ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシングは現代において、新たなるトレンドではありますが、「需要」や「供給」と聞くと、株式や為替の取引に使われる複雑なグラフの動きのイメージを想像して、なんとなく難しいと思う方が多いかもしれません。
しかし、ホテルや旅行商品の料金、テーマパークの入場料など、実はDPはすでに我々の生活の中の名さまざまなところに浸透しています。最近国土交通省より2023年5月からタクシーの料金にDPを適用するとの発表もあり、ITテクノロジーの発展とともにますます様々な領域へのDPの導入が加速化すると思われます。
それでは、電力市場におけるDPの導入状況はいかがでしょうか?イギリス、フランス、アメリカ(一部の州)ではすでに電力業界におけるDPの導入が進んでいます。日本でも10年以上前から(正確には2012年)原発の運転停止による電力不足の影響でDPの実証実験が行われましたが、電気料金の高騰などの理由でまだ本格的な導入には踏み出せていません。
電力市場へのダイナミックプライシングの導入には様々な課題がある
なぜ電力市場にDPの導入が進まないのでしょうか?第一の理由として、「電気には代替材(だいたいざい)がない」ということが考えられます。
電気は生活で欠かせないインフラの一つ。生活水準によって使用量に差はあるものの、21世紀の日本で生活する上で電気のない日々は想像できません。仮に電力市場にDPを導入したとして、低所得層の生活水準の低下や医療機器のように命に関わるところに使われる電気料金の負担など、社会の混乱や国民の抵抗に直面する恐れがあります。
第二の理由は「個人情報やプライバシーの問題」です。電力市場にDPを導入するということは、利用者の電気の使用量や使用時間など、ある意味「個人情報」とも呼べる部分が全て露出されることになり、工夫の必要があります。
卒FITユーザーを含めた再生エネルギーの活用によって、今後の電力市場の変化に期待!
とはいえ、2021年から2022年にわたってDPを用いたEV充電サービスの実証実験を行うなど、電力市場におけるDPの導入に関する議論や研究は着実に進んでいます。
まずは他国の事例研究・分析をもとに適切な規制とITシステムのサポートを導入することで、DPに関わる問題点を改善・解決していくことでしょう。
卒FITユーザーを含めた再生エネルギーの有効活用とJEPX市場単価の改善など、適材適所への電力供給による電力運用の効率化やカーボンニュートラルの実現など、DPの導入によるこれからの社会の変化に期待したいところ。
ちなみに、ダイナミックプライシングとはまた異なりますが、卒FIT後の余剰電力をよりスマートに使うなら市場連動型の買取サービスである「エネまかせ」もおすすめですよ!